天草育ち、熊本市在住のエディター&ライターであり天草の衣食住のくらしにまつわる魅力を伝える「シマノタネ」代表の木下真弓が独自の視点で天草を切り取るコラムです。

天草がもっと遠ければいいのに。

  • 食べる
  • ふれあい

「天草って遠いよね」

「天草って、パスポートいるんでしょ(※もちろんジョークです)」

天草にゆかりある人なら、おそらく一度は投げかけられたことがあるであろうこの言葉。10代の頃、バイト先でほろ酔いのお客様に言われたときは戸惑いただただ苦笑いするばかりでしたが年を重ねるにつれていろんな答えを返せるようになりました。天草各地の魅力的なひとやものに出会った今では、「寄り道こそ、天草旅の醍醐味です!」と、胸を張って言えます。そう。天草は“急がない旅”が似合う場所とはいえ、そうそう寄り道ばかりもしていられなという方には、移動を「旅」の一部にしてしまうことをおすすめしています。

 

ただの移動に終わらせるか。
移動を「旅」として楽しむのか。

駅のホームに響き渡る軽快なメロディ。ジャズの名曲Take the A Train」の調べにのせ、列車が姿を現しました。「A列車で行こう」は、熊本駅と三角駅を結ぶ「あまくさみすみ線」の観光特急列車です黒い車体に金色のエンブレム、車内には随所にステンドグラスが配され、乗車した瞬間から異国情緒に包まれます

 

16世紀の天草に伝わった南蛮文化がテーマとあって、天草更紗や植物をモチーフにしたものなど、座席のデザインもさまざますぐにどっしりと腰を据えてくつろぎたいところですが、その前に、A-TRAIN BAR」をのぞいてみましょう。

 

シックな雰囲気のバー車両、聖母マリアや天草四郎を彷彿とさせる設えがなされています。アルコールやソフトドリンクなども揃うカウンターバーで是非ともチョイスしたいのが、オリジナルのAハイボール」。天草名物として知られるデコポン果汁たっぷりのハイボールはすっきりとした飲み口で、ビタミンカラーが海辺の風景にもよく似合います。

 

おいしいハイボールを片手に、車窓で切り取られた絶景を見ていると、20分の乗車時間はあっという間海の絶景とおいしいお酒、そしてJAZZと列車の揺れる音。それはまさに、大人の天草旅にふさわしい時間です。

日本一の干満差をほこる有明海の向こうには雲仙・普賢岳の雄姿を望み、干潮時には御興来海岸(おこしきかいがん)の美しい砂紋も見られるため、写真好きには少々忙しい時間になるかもしれません。「いっそ天草がもっと遠ければいいのに」なんて思う人も多いでしょう

 

高鳴る胸の鼓動をそのままに、天草旅を満喫するなら、三角駅のすぐ目の前の港から出発する高速船「天草宝島ライン」に乗ってみるのもいいでしょう。「A列車で行こう」の到着時間に合わせ、約15分ほどで前島(松島)港へA列車の気分を保ちつつ、天草五橋や大矢野〜松島の島々の絶景を眺めるクルージングは、すてきな天草旅の序章となるはずです。

 

イベントへのお問い合わせは、
各イベント運営者様へ
よろしくお願いいたします。